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Q.61 お風呂の水がよく入ってしまいます。毎回入浴後に耳掃除をするのはよくないでしょうか?
A.61

 確かにやりすぎは問題です。外耳道の慢性湿疹や外耳道炎でお見えになる方の多くが、耳を掻きすぎたためになってしまったように見受けられます。
 入浴後は特に水が入った訳でもないのに湿った感じになり、また耳垢も少しふやけた状態になるので、耳のお掃除を一所懸命やってしまいます。そうそう耳に水は入りませんから、ちょっとタオルで耳の入り口を拭くぐらいでよいのですが、やはり気持ちが良いのでしょう。やってしまうかたはやり過ぎてしまうのです。
 その結果、小さな傷を作ってしまい炎症を引き起こす事もあります。細菌が感染すれば大変です。気をつけましょう。

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Q.62 年を取ってきたら何かふらつくようになりましたが。
A.62  お年を取るとふらつき感を訴える方が多くなります。それは筋肉や関節の運動の衰えにより、それらの共同運動がうまくいかなくなるからです。また動くものをじっと見るということも正確ではなくなります。めまいは末梢性と中枢性に大別できますが、高齢者では良性発作性頭位性めまいなどはありますが、メニエールとか突発性難聴などに伴うメマイは少なくなるようです。やはり動脈硬化、高血圧、低血圧などによる脳の循環障害が多いいと考えられます。

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Q.63 中耳炎になって何回か切開を受けているのですが大丈夫でしょうか。
A.63  どんなことでも100%大丈夫ですとは言えませんが、ほぼ大丈夫です。以前は抗菌薬で容易に治っていた中耳炎も原因となる細菌に抵抗性が生じてしまい、なかなか治らない、いわゆる難治性中耳炎といわれる病態があります。中耳炎による膿を残しておくと中耳炎をたびたび繰り返す原因になったり、滲出性中耳炎に移行したりします。鼓膜切開により排膿を促してやると、本人の症状もらくになりますし、さきほどの病態に移行する頻度が少なくなります。鼓膜切開の傷はだいたい2~3日か、炎症が強くて膿が多い場合は閉鎖するまでが長くなりますが、1週間もすればとじます。膿を出すのが目的ですから、排膿が十分に行われてから閉じるのをまちます。ただ、中耳炎の度に、鼓膜切開を受ける子供の身になってみると、たとえ表面麻酔をするとは言っても、大人たちに頭や手足を押さえられ、耳の中に小切開刃を入れられ、2〜3mmの切開を受けるのは、恐怖心を植え付けることもあります。半年に4~5回受けるようであれば、他の手段も考えなければなりません。

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Q.64 たびたび中耳炎になるのですが、なりやすい体質があるのですか。
A.64  たびたび中耳炎になるのですが、なりやすい体質があるのですか。 A急性中耳炎は、鼻やのどに感染した細菌やウイルスによって引き起こされます。これらが耳管(耳と鼻をつなぐ管)を通って中耳腔に感染することで発症します。
ふつう人間の体では外から入ってきた異物に対して、異物に対する免疫が働きそれを排除しようとしますが、子供ではまだその免疫応答が弱く、十分に防ぐことができません。また、子供の耳管は大人に対して長さが短くまたその傾きも水平に近く、上気道感染症にかかった場合、感染がおこりやすい構造になっています。
また、耳管は咽頭と中耳腔の空気の交換を行い、気圧の調節を行ったり、中耳腔に感染した細菌などを繊毛の働きにより排除しようとしますが、この耳管の機能が弱い子もいるようです。
ここ近年、抗生剤が利かなくなっている細菌による中耳炎も見受けられます。集団保育により潜在的に広がってきているのだと思います。また、働くお母さんも増え、薬の服用がきちんと行われないために、十分に治らずに、また、局所免疫の回復がなされないため、またしても新たな上気道感染症(いわゆるかぜ)にかかり、短期間に発症するという例も見受けられます。

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Q.65 扁桃腺の摘出に関しての適応を教えて下さい。
A.65  扁桃腺の摘出術は耳鼻科の手術としては頻度の多い手術です。
以前は椅子に座って局所麻酔で行っていましたが、近年は全身麻酔下で行われ、両側の扁桃腺を同時に摘出します。手術時間としては麻酔の導入時間、覚醒時間も含めて1時間から2時間ぐらいで、実際の手術時間は30分から1時間ぐらいです。入院期間は約1週間です。術後1週間後ぐらいまでのいわゆる術後出血がありますので、その期間を過ぎてからの退院となります。術後出血の発生率も非常に少ないですので、この手術は安全性の高い手術となっています。全身麻酔による死亡例がまれにあるようですが、手術によるものではありません。また、扁桃腺は免疫組織ですが、これを摘出することによる、免疫能の低下は今ではないと考えられています。
適応としては下記の基準を満たすものと考えています。
  1. 習慣性扁桃腺(3歳以上で、下記項目のいずれかを満たすもの)
    1. 発熱を伴う急性扁桃腺炎が年4回以上。
    2. 急性扁桃腺炎による年間休園(休校)日数が2週間以上。
    3. 扁桃腺炎指数=(急性扁桃腺炎の年間罹患回数)×(罹患年数)が8以上
  2. 高度肥満による睡眠時無呼吸症候群
  3. 扁桃病巣疾患
    1. 3大疾患…掌蹠膿胞症、胸肋鎖骨過形成症、IgA腎症
    2. 扁桃腺が病巣として疑われる疾患
      リウマチ性疾患、糸球体腎炎、微熱、尋常性乾癬、紅班、非特異的関節痛、慢性関節リウマチ、ベーチェットなど
  4. 持続性の咽頭通、嚥下痛を伴う慢性扁桃腺炎
  5. 扁桃周囲膿瘍を反復するもの
  6. 扁桃腫瘍
扁桃腺の摘出術をしなくとも成長とともに罹患回数は減少してきます。しかし、小児に5 〜10年の経過をみて、手術の適応を考えることは、問題はないとは断言できません。 やはり、いつもみてもらっている耳鼻科の先生とご相談なさって適応を決めていただくの が最善と考えます。

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Q.66 耳鼻咽喉科領域における高圧酸素療法について。
A.66  耳鼻科領域でも高圧酸素療法の適応になる疾患があります。急性の感音性の難聴である突発性難聴です。いろいろな原因が考えられますが、確実な病態はわかっていません。
この治療法は簡単に言えば、大気圧よりも高い気圧環境の中で高濃度の酸素を用いることで、病態の改善を図ろうとする治療法です。私たちは大気圧下で空気を吸っていますが、われわれの血液中には微量しか存在しない溶解型の酸素を増量させて、高い酸素分圧を有する動脈血を作り、全身に酸素をいきわたらせようとする治療です。 極めて高い酸素分圧を有する動脈血を抹消の隅々の組織にまで届けることによって得られる効果としては、
  1. 皮膚や筋肉、神経などの虚血が改善すること
  2. 高い酸素濃度にあたると血管が収縮するため、組織の浮腫が改善すること
  3. 酸素は活性酸素になると強力な殺菌作用を発揮すること
  4. 線維芽細胞や骨芽細胞の活性化によって組織損傷の修復が促進されることなどがあげられます。
では実際にはどういうかたに、私どもがお勧めするかというと、難聴の程度が中等度から高度になってしまったかたや、難聴が急激に進行するかたです。当院の近郊の病院の脳外科で受けることができます。 高圧酸素療法の適応と考えても、実際にやってみて、無理な患者さんがいます。気圧は2〜3気圧位かかるため、耳抜きという、耳が詰まった時にやる行為ができない方や、日頃耳管狭窄傾向の方、鼻炎などで鼻が詰まっている方などです。あと、カプセル型の高圧酸素室にはいるので閉所恐怖症のかたではむりです。また、途中で気圧性の中耳炎を起こしたりすると中止になります。

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Q.67 Surfer's Earについて教えてください。
A.67  耳が詰まった感じがあるとの訴えで、サーフィン歴30年のかたがお見えになりました。これはもう見たこともないほどの、サーファーズイヤーでして、両側の外耳道の後壁が膨隆していて外耳道が狭小化していました。
 ではSurfer‘s Earとはなんであるかというと、冷たい水しぶきの刺激によって、外耳道に骨性の隆起が生じることです。サーフィンをやる人は男性に多いいので、男性に多くみられ、その多くは多少の大きさの違いはあっても両側にみられます。外耳道の完全閉塞になることはまれではありますが、耳垢が詰まってくると聞こえが悪くなります。組織学的には外骨種で層状に骨の形成があるようです。少し写りは良くないですが、当院の患者さんの耳です。

 ちょっと写真は暗いですが、これは両側の耳の穴です。ふつうは外耳道の奥に鼓膜が見えるはずです。
左は左の耳で、右は右の耳です。
両側とも外耳道の後壁が突出してほぼ外耳道全体を占めるような大きさになっています。鼓膜は見えません。外耳道と隆起との間に耳垢が少々ありますが、中は見えません。

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Q.68 タンに血が混じるのですが。
A.68  いろいろな状況が考えられます。
  1. 鼻血がのどにまわる。
  2. 歯茎などの歯科的疾患からでる。
  3. 咽頭炎などで粘膜から出血しやすくなっている。
  4. 喉頭炎や喉頭の腫瘍などで出血する。
  5. その他
  強く咳ばらいしたりすると、風邪気味の時には痰に血液のすじみたいのが混じったり、痰そのものが鮮紅色だったりします。先ずは耳鼻科を受診していただき、局所的に異常所見がないか確認してもらってください。

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Q.69 耳の中にもカビが生えるのですか?
A.69  そうです。生えるのです。健康な人にも。黒とか白とか、基本は耳の穴をいじりすぎてしまい、皮膚をびらんさせた状態にしてしまい、細菌感染を起こしたり、その状態が続いて湿った、暗くて暖かい環境が整うと、カビも生えてくるのです。主にカンジダとかアスペルギルスで、治療としては局所の清拭と乾燥、抗真菌薬の塗布になります。なかなか治り辛いですが、気長に治療していくしかないです。真菌の場合はかゆみが強いのも特徴ですし、分泌物が真菌塊となって毎回ごそっと取れることがあります。どうしても治り辛い場合で時間がとれるかたでは、特別な薬で、耳洗浄を行うこともあります。

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Q.70 年をとってきたら物が飲み込み辛いのですが?
A.70  ここでは加齢による生理的変化についてのべます。先ず嚥下には3相あり、口腔期、咽頭期、食道期があります。口腔期では口の中の感覚と咬筋が衰え、咀嚼力が弱くなり食塊を細かく砕くことができない、唾液の分泌量がやや低下する、といったことです。咽頭期では咽頭反射の衰えで食塊がスムーズに食導入口部に遅れなくなる、頚部の筋力の低下により喉頭の挙上がうまくおこなわれない、粘液の分泌低下による粘膜機能の低下など…。食道期に関しては内科で。いろいろな機能が衰えて協調運動がうまくいかないということでしょうか。75歳以上になると人によって違うかと思いますが、あちらこちらのタイミングがおかしくなり嚥下障害や誤嚥が起こりやすくなります。耳鼻咽喉科的に見落としてはいけないのは、中・下咽頭がんです。ご心配な場合には耳鼻咽喉科を受診してください。

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