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Q.91 蓄膿症って?
A.91

蓄膿症とは広辞苑を参照すると、「肋膜腔・副鼻腔・関節・脳腔などの体腔内に膿(うみ)のたまる疾患。普通には、慢性の副鼻腔炎の場合をいい、頬部緊張、重圧感、頭痛、悪臭ある膿性の鼻汁分泌、嗅覚障害などを伴う。」 耳鼻咽喉科では上記のとおり、いわゆる副鼻腔炎のことで、今でもこの言葉を一般の人は使います。患者さんでは鼻汁が長引くと、蓄膿が心配で…とおっしゃって来院される方がいます。 その発生のメカニズムはネッターの臨床解剖学アトラスに明快に図説してあります。急性のものと慢性の2種類がありますが、最初の発生機転は同じです。



下の写真は、上2枚は正常の方の右鼻腔で、一番下が両側の中鼻道よりポリープが発生している慢性副鼻腔炎の方です。中鼻道や中甲介が見えなくなっています。右のポリープの間からは膿汁が流れでています。


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Q.92 夏にもインフルエンザがあるんですか?
A.92

あるんです。9月になってすぐのとき、初めてのお見えになった患者さんですが、一昨日から、高熱が出て、咽喉も痛いので内科より耳鼻咽喉科を受診したほうが良いのではということで来院されました。体温は39.8度と、この暑いのに大変ですねと言いながら、のどを見ても咽頭・喉頭は発熱の原因となるような強い腫れはありません。全体に赤く、咳も少し出始めています。一番はインフルエンザを疑い、迅速診断キットで検査するとA型でした。ウィルスは常にいるのです。ただ流行する時期はウィルスにとって行動しやすい冬期ということですが、暑い時期でもおかしいなと思ったら、検査します。



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Q.93 中耳炎で鼓膜切開をするときはどういう状態ですか?
A.93

これからの季節、風邪に伴って中耳炎を発症する患者さんが多くなります。小さいお子さんでは、口で訴えることができないで、夜泣きがひどかったり、鼻・咽喉の症状のわりには、高い熱が続いたりと、お母さんは心配です。

小児科の先生に勧められて耳鼻科を受診する方もいます。中耳炎の程度により、対応は当然異なっています。

今回は小さいお子さんの中耳炎で鼓膜切開をした患者さんの鼓膜の状態をしめします。中耳炎になってないほうの鼓膜所見と比べてみれば一目瞭然です。

この2例はここ2ヶ月の間で、協力していただいたお子さんです。小さいお子さんでは、頭を固定したりすると、そのことだけで、泣き騒いだりするかたが多いので、ご協力感謝、感謝です。


症例(1)
右耳 正常 左耳 中耳炎

症例(2)
右耳 中耳炎 左耳 正常

中耳炎の耳はごらんのように、鼓膜の膨隆、中耳腔に膿のたまったような鼓膜の濁り、外耳道全体の発赤があり、症例Aでは風船状にプクっと腫れている所見も見受けます。正常耳では透明感のある鼓膜と耳小骨の鼓膜に付着する突起がきれいに見えます。外耳道の発赤はありません。

鼓膜切開は切開刃で1〜2mmの切開を行います。もちろん表面麻酔を行います。

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Q.94 扁桃腺の摘出術の術式について教えてください。
A.94

扁桃腺の手術については、小さいお子さんで、よく扁桃腺を腫らしてその度ごとに高熱が出て、幼稚園や学校を休まなくてはいけなくなったり、扁桃腺の炎症によるため、いびきがひどく夜間の睡眠もさまたげられていて、そのため心配になる親御さんからよく聞かれる質問です。

ここでは口蓋扁桃のことを指していますが、咽頭扁桃(アデノイド)も問題になります。両方とも生下時には小さいですが、年齢とともに肥大し、口蓋扁桃は6〜8歳で、アデノイドは5〜7歳で最大となります。小学校入学以降は両方とも見かけ上は小さくなります。

口蓋扁桃摘出術とアデノイド切除術にはそれぞれ独立した適応がありますが、小児においてはこれらの2つの手術が同時に行われることが多いです。ちょうど年齢的に手術適応が併せて存在するからです。 手術の適応に関してはQ.65で述べていますので、ここでは実際の術式について述べます。図に関しては耳鼻科のバイブルからの引用になります。 基本は全身麻酔です。

両方の手術とも懸垂頭位で下の図のように開口器で口を大きく開け、開口器と一体かした舌圧子で舌を押さえ扁桃腺を直視下におきます。この全身麻酔は気管内挿管ですので、口蓋扁桃摘出だけのときは、麻酔科医が気を利かせて、経鼻挿管してくれると、やや術野は見えやすいのですが、これがアデノイドも併せてとるとなると、経口挿管ですから、麻酔のチューブも口の中にあって、なかなかやり辛いものがあります。挿管チューブを左右にうごかして、頭につけたライトで自分の視野に合わせるようにします。ライトは天井からの無影灯ではありません。集光させて口の中という穴倉の中の扁桃腺を適切に剥離、切除していきます。耳鼻科の手術はのどでも、鼻でも、耳でも小さな穴倉を覗き込む手術が多くを占めます。ただ近年の内視鏡の発達により、内視鏡下の手術形式をとるものが多くなっています。でも扁桃腺の摘出術はそれほど変わっていないと思います。

扁桃腺もアデノイドの手術も基本的には切りっぱなしです。こう言うと語弊がありますが、もちろん扁桃腺は被膜におおわれていますので、大きな血管は結索しますが、コロッと塊でとります。本当に桃の種のような感じです。アデノイドの場合は被膜はありませんので、後鼻鏡や触診にて間接的に大きさなどを確認して、いざ切除の時は、いっきに削り取るという感じです。切除直後には止血作用のある薬液でしばらく押さえたり、電気凝固なども駆使して止血しますが、それでもじわじわと出てくる出血に関しては医療用のコットンなどでタンポンをしたりして1晩そのままにして、翌日止血を確認してから除去します。以上のやりかたはわたしが勤務医としてバリバリとオペしていたときの自分なりの手順ですので、今は多少違うかもしれませんが、大筋は同じと考えてよいでしょう。

翌日から、創面はだんだんと白くなっていき、いわゆるかさぶた(痂皮)のようなものが形成されていきます。この時に不自然に痂皮がはがれたりすると出血する場合があります。ですから、しっかりした上皮ができるまでは術後出血の可能性はあります。

食事は流動食から、3分、5分、7分、全粥とあげていき、退院までに普通食が食べれられるようになります。口の中の手術ですから、痛いことも痛いようです。 子供は回復が早いですが、大人の方はなかなか痛みが続くようです。

図(1)は実際の手術です。扁桃腺やアデノイドの手術は、耳鼻科医が比較的最初に覚える手術です。剥離時に思わぬ出血があったりすると、横で指導している先輩先生に交替してもらって止血処置をしてもらったりしますが、一人で手術が完結できると、外科医としての喜びと満足感が少し味わえます。あとは患者さんが術後出血もなく、全身麻酔から、順調に回復してくれれば病室に戻ります。患者さんがお部屋に戻って、呼びかけにも十分に反応し、術野の出血がなければ一応安心です。2時間ぐらいしてから病室に回診にいきます。
図(2)は扁桃腺の手術手順です。剥離をいかにうまくおこなうかがポイントです。
図(3)はアデノイドの手術器械とその使い方です。








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Q.95 ハウスダストアレルギーってなんですか?
A.95

アレルギー症状を訴える患者さんでは、ハウスダストが原因アレルゲンとなることが多いのですが、ではそのハウスダストとはいかなる物なのかです。

ハウスダストとは屋内に発生する様々なアレルゲンの混合物です。ダニ、ネコやイヌのふけ、ガやゴキブリなどの昆虫の死骸や糞、カビ、季節によっては花粉なども含まれるとおもいます。

ということで、ハウスダストとはマルチアレルゲン項目であり、ここにはチリダニ、ネコ、イヌ、ガ、ゴキブリが含まれます。ですから、ハウスダストアレルギーの方は、それぞれの項目についても精査する必要があると考えます。




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Q.96 子供が車酔いしやすいのですが?
A.96

車酔いは大人より子供に多く見られます。バス旅行の途中で気分の悪くなる子がクラスに一人はいたものです。

ものの本によれば、両側前庭機能廃絶状態や、等速度でまったく揺れのない状態で直進している乗り物では酔いは起こりません。すなわち半規管や前庭に加速度刺激負荷がかかった状況で発症することから、加速度病とも呼ばれます。

乗り物の動きや揺れによる耳石・半規管などの前庭系への刺激に、景色の移動による視覚情報、心理的要因、嗅覚刺激、飲食などによる腹腔臓器からの求心刺激、動いてる途中での力学的な影響が自律神経中枢を刺激して、普段の日常生活では受けることのない刺激に対して、脳の中での情報処理がうまくいかず、混乱した状態になります。

自律神経の不安定な状態、迷走神経の緊張状態などにより、悪心、嘔吐、顔面蒼白、冷汗、便意などの、乗り物酔いの症状を引き起こします。

普段では乗り物酔いを起こさない人でも、体調不良、寝不足、過飲過食、不安、過緊張などの要素が加わると、軽度の揺れや動きでも乗り物酔いが生じやすくなります。

では乗り物酔いの予防としては、どうしたらよいかというと、進行方向を注視し横を向かないこと。読書ヤゲームなどは加速度の加わる方向と視線がずれることがあるので、車内ではぜったいにしないこと。バスの中では振動の少ない前方で中央部にすわること、船の場合には、振動の少ない中央部進行方向向きの座席がよいでしょう。

十分な睡眠、体調管理、乗車前の飲食を控える。ゆったりとした服装で酔い止めを飲んで車内では寝てしまう。これが一番でしょう。




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Q.97 乳児の耳垢はとったほうが良いのでしょうか?
A.97

外耳道の軟骨部には毛が生えており、耳垢腺や皮脂腺があります。耳垢腺に関しては外耳道の洗浄作用、濃度の高い脂質による潤滑作用や、抗菌作用のある、リゾチームやIgAも含まれるといわれています。

また、外耳道や鼓膜の上皮は新陳代謝により剥げ落ち、外耳道の入り口に向かって移動していきます。ですから本来耳の奥で耳垢が固まることはないのですが、親心からつい一所懸命にきれいにして、外耳道の皮膚を傷つけてしまうことがあります。そうすると耳垢の移動を阻害し、むしろ耳垢を耳の奥においやってしまう場合もあります。ですからやりすぎは禁物です。

生まれたての赤ちゃんは、体中を覆っていた体脂が耳の中にも残っていることがあります。弱い皮膚を守る意味もあるので、少々の耳垢はとる必要はないと考えます。耳の中も小さく、いくら専門の耳鼻科医といえども本当に見辛いものがあります。もちろん、ぐちゅぐちゅしてきたりして耳漏のようになってきたら診察を受けてください。なお寝返りを打てるようになるまでは、下になったほうの耳の湿気が多くなり、耳垢が反対側と比べて湿った感じになったり、またそこに感染が起きたりして外耳道の炎症をおこすこともあります。

心配な場合はお近くの耳鼻科を受診されてください。




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Q.98 中耳炎になりやすいのは体質でしょうか?
A.98

以前にも、Q.64でお答えしていますが、確かに外来で中耳炎を起こす幼児をみていると、上気道感染症にともなって、たびたび繰り返す子と、単発的に発症する子がいます。いまよく言われている耐性菌の問題とか、低年齢からの集団保育による、感染症の繰り返しなどが大きく影響していると思います。あと患児の免疫力にも影響されていると思います。この点でいえば、「なりやすい体質」というのがあるといえるでしょう。でも2〜3歳を過ぎると免疫力もupして来院回数がぐっと減ってきます。そして小学校に入ると体力もつき、耳鼻科と無縁になるお子さんが多いです。ひどく風邪をひいたときに、久しぶりに中耳炎になって、治療させていただくこともあります。




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Q.99 重心動揺検査について
A.99

めまい検査のひとつとして、耳鼻科の診療所にはだいたいおいてある検査機器です。今では内科の先生でも置いているところもあるようです。めまいを訴える方は日常診療では毎日何人かはいらっしゃいます。手軽にできる検査ですので、少し説明いたします。
以下はメーカー側の説明です。
重心動揺検査とは、めまい・ふらつき・平衡障害を、定量的に評価・判定し経過観察を見る装置です。
その評価・判定とは、めまい・ふらつき・平衡障害の程度を、揺れの長さ、面積と言う数値で表し、健常者データと比較して評価・判定します。
重心動揺検査での経過観察・お薬の効果とは、めまい・ふらつき・平衡障害の長さ・面崎のデータを、初診・一か月後・二か月後と比較する事により、経過観察データとして役立てます。
また、健常者と比較したデータをもとに、患者さんへのインフォームドコンセントや治療方針に役立ちます。
以上がこの検査の目的ですが、簡単な検査で患者さんの負担がない検査ですが、評価に関しては絶対的なものでなく、あくまでも参考検査の域をぬけません。

当院では上述のようには、経過観察データとしての利用はあまりしていません。







上の検査結果は重心動揺検査機器を買い替えた時の私のデータです。
従来の検査内容から、足底部にふにゃふにゃしたラバーを入れ、深部知覚の影響も排除した、ラバー負荷検査も入りました。
だいたいが正常範囲ですが、ラバー負荷においては、評価がBですので、前庭障害の可能性があると示唆されていますが、そこは日常生活において、特に問題ないので、総合的に判断します。
日本全国2200人の健常者のデータを内蔵していて、年齢とか性別とかで比較して判定するわけです。




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Q.100 声が普通に出るときと、出ないときがあり、仕事で困るのですが?
A.100

先ずは、器質的な病変があるかどうかということです。この場合は声帯に何か変化があります。声帯ポリープや、声帯結節、声帯の癌、声帯の肉芽、声帯の炎症、その他。 あとは、機能的な問題で、以前に院長の気ままな話題で取り上げた、声帯の麻痺(反回神経麻痺)や、心因的な問題で声が出ない?出せない?場合です。

今回はこの心因的な場合に関してお答えします。

心因性発声障害といって、精神神経症的なもので、特に精神的外傷(叱責、驚愕、悲嘆など)や心理的葛藤などに起因するものです。

先ずは心因性失声といって、以前はヒステリー性失声症と言われていたものです。全身的にはヒステリー症状があるようです。耳鼻科の教科書によると、男女比は1:2~3、年齢は20~40歳に多いようですが最近では学童にも見られるようです。症状はささやき声発声しか出せない状態です。

次に心因性仮声帯発声です。これは正常の場合には発声に関与しない仮声帯が、発声時に強く内転して、正常の声帯振動をさまたげ、強い気息性、圧迫性の音声を生じます。

いずれの場合でも心因が認められる場合には、心因反応に対する精神医学的アプローチをおこない、面接などの心理療法を受けていただき、それに加えて発声訓練を行っていただきます。

下の図は仮声帯発声の写真です。右側に正常での発声時の声帯を並べます。

 

先ず上から安静呼吸時です。左の中段は発声途中で、仮声帯が中央に寄ってきているのがわかります。下段は発声時ですが、右の正常の方の発声では声帯が中央に寄り、はっきりとわかります。左の方では仮声帯が中央に寄ってしまい、声帯がはっきりみえません。 みなさんでも息をこらえてのどに力を込めて話すとこの状態になると思います 。




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