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2021年1月
〜耳鼻咽喉科における心身症の類〜

2020年が華々しいオリンピック・イヤーとなるはずだったのが、コロナウィルス・イヤーとなってしまい、私どもの診療所も多大な影響を受けました。患者さんの激減です。

そんな中で、病気ではないのだけど、自分を病気ではないかと心配して来院された患者さんの中では心身症に近いようなかたがいます。
耳鼻科医のバイブルのなかでそれに該当するような病名は下記のようなものがあります。

  1. 心因性難聴
  2. 心因性めまい
  3. 心因性発声障害
    1. 心因性失語症
    2. 心因性仮声帯発声
  4. 咽頭異物感

それぞれを説明していくと
  1. 解剖的に耳にはなんら異常なく、心因的に起こるもので、測定の都度、聴力検査の値が動揺して、そのほかの検査では異常を認めないもの。 脳波聴力検査などの検査は当院ではできませんので日ごろの生活状況を伺い推測するしかありませんが、学校健診などで異常といわれた児童では検査に集中できずに、その都度大きな変動があるお子さんがいます。そういう場合には日を開けて三度ぐらいする場合もあり、根競べ?みたいな感じになり、最終的には私が納得する値に到達するというケースがあります。子供の気持ちの問題や性格に関係するようです。

  2. 患者さんが訴えるめまいはかなり主観的です。ですから耳鼻科的な眩暈の確認としては「眼振検査」による「自発眼振」の存在が、その患者さんの病態をしめしています。
    先天性眼振以外は作り出すことはできません。患者さんの意思で作り出すことが出来ないということは、いかに眩暈を表現していても耳鼻科医は診断できません。よく他科で「血液検査や心電図などに異常がないからこれは内耳による耳鼻科のめまいだ」といわれ来院される方が多いですが、眼振を見ずして、「これはメニエールだ」とか「良性発作性眩暈だ」とかは診断しないでください。患者さんはその言葉を信じて来院されます。
    高齢の方では当然聴力の低下や耳鳴りが普段からあり、それに伴ってめまいがあるとメニエールと診断されて、ご本人もそれに納得されてしまいます。

  3. 精神病や精神的な外傷(叱責・驚愕・悲嘆など)や心の問題でおこるものです。
    1. いわゆるヒステリー性失声症といわれるもので、完全に声が出ないか、出てもささやき声ぐらいで、心因性反応が発声機能症状としてあらわれたものなので、精神科による対応が必要となってきます。
    2. 正常の場合には発声に関与しない仮声帯が、発生時に強く内転して正常の声帯振動をさまたげ、強い気息性、圧迫性の音声を生じます。

  4. 訴えとしては塊がつかえたような異物感、詰まる感じで飲み込みづらい感じなどです。 原因としては慢性副鼻腔炎などによる後鼻漏、上咽頭炎、咽喉頭酸逆流症、甲状腺腫などの外部からの圧迫(これはよほど大きくないと症状は出現しないとおもいます)、舌扁桃肥大などが原因とされますが、実際にはこういった症状がない場合は神経質でがん恐怖症があったり、精神的な要因が潜んでいる場合があります。

以上ですが、鼻の症状での神経症と言われるようなものはないのですが…