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2022年1月
〜コロナ禍による塚原耳鼻科騒動記〜

2019年の年末に発生した新型コロナウィルス感染症が私どもの小さな診療所にも大きな影を落とすとは想像もしませんでした。

2020年1月には中国の武漢から発生した新たなコロナウィルスとの情報を日本国民も得て、国内でも武漢旅行歴のある感染者が発表され、その後2月になると感染者の発生がぼちぼちと現れ、特に記憶に新しいのは大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の感染者出現でしょう。この前後よりマスクが品薄になり、当院に出入りしている薬問屋にも、在庫が全然ないといわれました。諏訪大変!の事態になり、市中のドラッグストアやホームセンターにはまだあるとの情報を得て、買い占め行為はいけないとは思いつつも診療を行う上で背に腹は代えられません。職員に買えるだけのマスクを購入してもらいました。

その頃は一般の人もそれほどひっ迫した状況になっているとは思わなかったのでしょう。 私自身も近くのホームセンターに朝・昼・晩と個数制限までの数を買いに行きました。
その後は皆さんの記憶にも残っていると思いますが、マスクを買い求めるための列がドラッグストアなどで見られ、1日の販売個数も制限され、当分の入荷はありませんでした。
私たちの涙ぐましい努力によって当院はマスクに困ることはありませんでした。次なる問題は消毒用のアルコールです。手指の消毒はもちろんのこと器械の消毒、患者さんの座った椅子、etc.の消毒です。これは国からのアルコールの割り当てがあるとの連絡でしたが、価格がかなり高く、アルコール濃度も一定でなく、どこの会社の製品が割り当てられるのも不明でした。そこで問屋さんや出入りの器械屋さんにも声をかけ濃度80%近くの消毒用アルコールは手に入れることもでき医師会からも支給されました。

次は当院の診療での問題です。耳鼻科の治療で大きなウエイトを占めていたネブライザー療法の休止です。飛沫の問題です。昔ながらの診療所のスタイルでは診察室の一隅にネブライザーの器械があって、万が一感染者がいた場合にはくしゃみや咳で飛沫が飛んでしまいます。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、喉頭の炎症でのネブライザー療法は患者さんも気持ちがよくなり、症状も軽快します。ネブライザーだけで来院されていた患者さんは皆無になりました。

2020年の3月上旬はまだコロナの緊急事態宣言もなかったため患者さんはそれなりに来院されましたが、下旬からは大幅な減少です。特に4月、5月は例年の半分以下の患者数で、いかに耳鼻科は不要不急の患者さんが多かったのか、また、マスク、外出控えによりいつもの風邪症状からの2次感染による、咽頭炎、中耳炎、副鼻腔炎などの患者さんも激減です。
その状態は秋になるまで続き、秋からは政府の呼びかけにもよるインフルエンザ予防接種の推奨で当院に例年割り当てられた分は比較的早く終了しました。 2021年になっても引き続き患者さんは少なく寂しい診察室です。一番の打撃を受けた科目は小児科と耳鼻科でしょう。

オンライン診療も推奨される時代になりましたが、耳鼻科の診察はほぼ暗い穴に光を当てのぞき込まなくてはできません。オンラインで診察などは土台無理ですし、その環境も整ってはいません。
いつも通りの処方の希望の方には、本来は診察の上、処方をする決まりですが、対面なしでの処方も行っています。処方内容や症状の変化がある場合には診察をお願いして、少なくとも2か月に1回は対面によりお話を伺いながら処方をするようにしています。

一般の診療所でもPCRの検査や発熱患者さんを受け入れているところも出ていますが、私どもの診療所では出入口は一緒ですし、待合室も隔離することはできません。検査のための別室も用意できません。
当初は発熱の患者さんが来た場合を想定して新たな衝立を準備し、PCRはしなくてもインフルエンザの検査はいつも通りしなくてはと考え、特別に検査用にアクリル板で飛沫が飛ばないような箱形のブースを業者に作って準備をしましたが、世の中の流れとして発熱患者は発熱外来のある病院を受診する流れとなり、使用する場面は一回だけでお蔵入りになりました。
やはり、他の一般の患者さんがいる中で発熱患者さんを見ることはできません。問い合わせのあった場合には発熱外来への受診をまず勧めそれからの来院をお願いしています。 症状がちょっとおかしいと患者さんのほうで自主的にPCRを受けられて、マイナスの場合はその上で症状の改善しない方が受診されています。PCRを受けていますとおっしゃるかたがままみられます。

これからの耳鼻科の開業スタイルは今回のコロナ騒動で違ってくると思います。やはり次なる未知の感染症に備えた診察形態を構築していかなければなりません。
今までのように気軽に患者さんを触診したり、咽頭・喉頭をのぞいたりすることができなくなりました。当然と言えば当然ですが、診察後はその都度アルコールによる手指消毒をしています。飛沫がかかりそうな場合はフェースシールドを装着しています。内視鏡をするときは万が一のことも考え私も職員もフル装備でやっています。フェースシールド、手袋、マスク、ビニールのエプロンの4点セットです。

なかなか大変な時代になりました。早くコロナが終息することを心より願っております。

追加

私たちは医療従事者として幸いにも一般の方よりかなり早くコロナの予防接種を受けることが出来ました。2021年3月中旬に1回目、4月上旬に2回目を受け、全員感染もなく日常の診療を行うことが出来ています。世間で言われているようなワクチンの副作用もほとんどなくごく普通に過ごせました。私で言えば、インフルエンザの予防接種で毎回10pぐらい腫れ、局所の痛みや熱感がいつもあるのに、このmRNAによるワクチンは何ともありませんでした。
6月に私の興味から予防接種による抗体値の検査いたしました。アボット・ジャパンの中和抗体NTを調べた結果は私が一番上の値です。職員の中では断トツの抗体産生能力でした。
ただし抗体が高いから感染の危険が少ないかというとそうではありません。
抗体価の変動を見るため再度12月にしました。世間で言われているように大きく抗体価の変化があるのか検査しました。

職員 6月 12月
院長 23844H AU/ml 3429H AU/ml
職員1 3884 H AU/ml 671H AU/ml
職員2 7307H AU/ml 805H  AU/ml
職員3 3196H AU/ml 397H  AU/ml
職員4 7480H AU/ml 1732H  AU/ml
職員5 3472H AU/ml 572H  AU/ml
職員6 5874H AU/ml 1851H  AU/ml
職員7 1710H AU/ml 163H AU/ml



NTの値は50以上が陽性になりますので接種して3か月後の数値では全員陽性の抗体値を得ています。私は抗体価の変化の途中経過を見るうえで9月末にも検査しています。
その結果23844→6823→3429との結果を得ています。最初から比べると14%に減少しています。他の職員もやはり同様の結果で10%から20%の値に減少しています。
結果としては抗体価の減少は認めるものの陽性の値を示しています。ただし現在問題になっているブレークスルー感染にはどの程度の抗体があればそれを阻止できるのかは不明です。12月後半に職員全員が3回目の注射をうけました。これによる抗体価の上昇がどの程度になるのか、果たして変異株にはどの程度効果があるのかわかりませんが、未知なるものに対する備えは現在考えられる最善の対策をするべきです。今後は感染してもインフルエンザのように治療薬が開発されwith CORONA となる時代がもうすぐやってくるのではないでしょうか。また将来的にはインフルエンザや他のウィルス疾患と同様に定期の予防接種の枠に入るかもしれません。